ジョージ・オーウェルという人が書いた1984年という小説がある。
たぶん村上春樹の1Q84はそれをもじったのだろうと思われる。
1949年に発行された。当時から未来を予言したような話である。
執筆した1948年に、下二桁を入れ替えたのが作品名になったという説もある。

私が中学生だった1982年頃に、1984年が近いという理由でこの小説が話題になり、
当時結構売れてた記憶がある。
当時の自分もそのブームに乗っかりその本を買って読んだが、
中学生の未熟な自分には話が小難しくて途中で挫折した。

監視社会の未来の世界で、そんな体制に疑問を持つ主人公が反体制的な行動をひっそり行っていたが、ばれて政府に捕まり拷問を受ける。
というぐらいしか理解できてなかった。
拷問と洗脳の描写が長々と続いてるのに飽きて投げ出してしまったような覚えがある。

今頃何故そんなことを思い出したかと言うと、
娘が大学でこの小説の原書を英語の授業で使っているらしいからである。
あんな小難しい話を英語で、、最近の大学生は大変である。
娘は当然理解できないので、日本語訳の小説を図書館で借り、
さらに、まんがで読破1984年というまんが本を買っていた。
まんがで読めるとは便利な世の中になったものである。

懐かしくなってまんが版を読んでみたら、中学生にはよくわからんことがわかってきて
内容の奥深さに感心した。
少なくとも1Q84よりはずっとましな小説だと思った。

暗く絶望的な近未来の世界はユートピアの逆でディストピアと言うらしい。
映画ではブレードランナー、未来世紀ブラジル、時計仕掛けのオレンジ、トゥモローワールドとかがそうなのかな。

中学生の時には監視社会としかわかっていなかったが、それに至る過程が興味深い。
第三次世界大戦後、世界は3つの大国だけになった。
オセアニア、ユーラシア、イースタシア
3つとも一党独裁で、3国の力は均衡している。お互いを理解しているが小競り合いも多く、。
常に戦争による緊張状態である。
という設定。

主人公はオセアニアのエアストリップワンというところに住む男。今のロンドンだそうな。
あらゆる部屋にはテレスコープという監視スクリーンのようなものが付けられ、
過去の歴史は常に都合のいいように書き換えられる。
言葉すら徐々に減らされ、余計なことを考えないように仕向けられる。
国家の指導者はビッグ・ブラザーという人で宣伝スクリーン上に現れるが実在しているかどうかは定かでない。
食料は配給制。

という、北朝鮮の思想とアメリカの技術力を合わせたような世の中でリアルである。
こういう体制を全体主義というらしい。

主人公は過去の事実を書き換える仕事をしている。
抑圧された生活に疑問を感じているところに、反体制組織があり、その指導者がいて、
その指導者が書いた本があるという噂を聞く。
その後、政治に興味なくただ楽しみたいという女と知り合い恋愛しながら、
反体制組織と接触し本を手にすることになる。
本を読んで二人で反体制に傾倒して行くさなかに当局に捕まってしまい、拷問、洗脳、
というバッドエンドである。

反体制指導者の本に書かれていたことで、
近代化により生産力が向上すると、貴族でない下の階級にも物が行き渡ってしまう。
そうなると下層階級にも余力ができ、上流階級を脅かしてしまう。
また上流階級の無能さもばれてしまう。それを阻止するには作った物を壊す。
つまり戦争を繰り返すことによって下層階級を常に貧しく抑圧させておく。
というくだりがあり、非常に生々しく、きっと今の独裁者の考えもそうだろうなと思う。

主人公が捕まったのは、彼に本を渡した反体制組織の人物が実は政府の人だった
というオチがあり、主人公は彼に拷問される。

このオチから想像するに、実は反体制組織も指導者も本も、政府の作ったでっち上げ。
戦争なんか起こってなくて、自分で自分の国を破壊し続けているだけ。
ユーラシア、イースタシアという大国なども本当は存在していない。
全て政府が市民を押さえつけるために設定したでっち上げかなと思われる。
という実に巧妙なミステリーのような気もした。

というわけで、まんが版は面白かったけど、活字版は今でもまだ読む気にはならない。(笑)
ちなみに他で1984というとJUMPでブレイクしたバン・ヘイレンのアルバムも思い出す。