吉田修一という人の表題作を借りて読みました。
不思議な小説でした。

この人は「悪人」が映画化され高い評価を受け、
今は「怒り」が映画化されている。
3作品に共通してるのは、殺人を犯し警察に追われるところ。
悪人は小説としても完成度は高かったが、
怒りはいまひとつだった。

橋を渡るは、他作品と同じく人間の闇を暗く描いています。
無関係の話が3つあり、最後に繋がるという
今流行りの手法です。
結構性描写もあるのがこの人の特徴か。
村上春樹ほど露骨じゃないが。

1話目はそこそこ出世してる飲料会社の男、画廊を営む妻、
二人が預かってる高校生の甥。
男には若い不倫相手がいる。甥は彼女を妊娠させる。画廊経営に暗雲が。

2話目は都議会議員の夫と、妻、子供。
夫は議会で女性議員に差別発言したが、しらばっくれる。
不正取引をして数百万円手に入れる。
それを知り悩む妻。妻の友人は子供の水泳コーチと駆け落ち。
子供は食ってばかり。

3話目はジャーナリストの男と婚約者。
クローンのような存在を作る研究を取材。
婚約者が元彼に寝返り、怒りの末殺害し逃亡。

こんな感じで中途半端に終わる各話の結末が4話で判明するのだけど、
70年後という設定でいきなりSFになる。。
この話の主人公は前話で話題のクローンのような人間もどきで、
虐げられた生活をしている。
前3話の人物の子孫の様子が判明するが、全て最悪の結末になっている。
それで、前話の逃亡犯が70年前からタイムスリップしてきて、、
というぶっ飛んだ話になって来る、、
なんだが、映画のAIとかインターステラーとか流星ワゴンのようなネタ
を取ってつけたような話になっている。

ずるいのは、エピローグで4話は逃亡犯が護送中に見た夢だった
みたいな落ちにしている。
それで、最悪だった各話が改善に向かうみたいな無難なまとめになる。

切り捨てるほどつまらなくもないが、
最後展開が娯楽過ぎた。
現実的な暗い話で、結論も不明なままにした方が
味わいがあって良かったのじゃないかと思った。
ただそうすると本があんまり売れないだろうけど。。

この小説もまた映画化される可能性は充分ありそう。
しかし最後の話はハリウッドじゃないと作れそうにないが、