タイトルの本を読みました。

数年前に「悪人」という映画化された秀作の作家。

悪人ほど良くはなかったが、いろいろ考えさせられる作品でした。

逃亡の果てに捕まったあの市橋の事件をモチーフにしている。
住宅街である夫婦が惨殺され、現場には血で書かれた「怒」の文字。
指紋から犯人は割り出され指名手配するが見つからないまま一年経つ。

ここから風貌の似た男の三つの話が同時進行で進む。
いづれも別の場所から移り住んで来た男。
一人は千葉の漁港で働き、一人は沖縄の島で働き、一人は東京で
ゲイの発展場で知り合った男と同棲する。
それぞれ人畜無害で周りからは受け入れられていく。
ちなみに発展場などというものは日本に実在するのだろうか?
フランスにはありそうだが。

三人とも過去を明かさない。風貌が逃亡犯に似ている。
ということで、周囲がざわつきだす。
警察に通報すべきか?でも彼があんな酷い殺人を犯すとは思えない。
という、周囲の人達の葛藤が詳細に描写される。

結局この三人のうちの一人が犯人で、警察に捕まる前に殺される。
という結末でした。
しかし冒頭の惨殺の動機も、「怒」の意味も明かされないまま小説は終わる。
各読者が自分なりに解釈しろということのようだ。

三人とも不遇の子供時代を過ごし、最初からレールを踏み外した人生。
そういう人間に対する、レールに乗った人の態度が「怒」なのだろうか。

理解あるふりをして、優しく接してくれるが、根本的には蔑んでいる
ということはいくら隠してもばれるのだろう。

自分も去年世間から脱落して以来、そういうことはよく感じる。

次は「ロスジェネの逆襲」を読む予定。
それが済んだら、また情報処理資格試験の勉強せんとあかんかも。