東野圭吾作の表題の本を最近読みました。
東野圭吾という人は、大阪府立大工学部出身。理系ではそこそこのエリートです。
そのせいか、彼の作品には理科系な内容が少しちりばめられています。
有名なガリレオシリーズや容疑者Xでは物理学者や数学者が出てくるし、この作品では登場人物が半導体の会社勤務という設定になっています。
理系の知識をちょっとひけらかしながら文筆業で億万長者になるという、
彼の生き方は理系の男にとっては理想的な生き方だと思います。
専門を活かしてそのまま技術系の仕事をしたところで、収入は金融業者の数分の一。
いくら頭がいいエリートでも技術系は金持ちにはなれません。
そういう意味で違う分野で生きている東野の生き方は憧れと言えます。
さて、小説の内容は
高校生の娘を未青年グループに強姦のあげく殺されたという父親が、
犯人に復讐するという、簡単に言えばそんな話です。
いや、簡単に言わなくてもそういう話か。
未成年はどんな凶悪犯罪をしたところで、国に保護され罰はほとんど与えられない。
被害者とその遺族は置き去りにされるだけ。
という現実を批判することがこの作品の目的のようです。
犯人は強姦した様子をビデオに撮って残している。
ビデオの内容を生々しく伝えることによって読者を被害者側に引き込んでいきます。
被害者の父親は密告電話によって犯人の部屋を見つけ、
そのビデオを見て、犯人の一人を惨殺します。
その後逃亡しながらもう一人の犯人を捜します。昔趣味で持っていた猟銃持参で。
犯人の少年達やその仲間や親を、これでもかと言うぐらい救いようの無い無能なクズとして描いています。
現実はこういうくだらん人間が蔓延しているのだということを強く主張したいのでしょう。
ラストシーン。
父親は密告の助けを得て、もう一人の犯人を追い詰め、撃ち殺そうとしますが、
一瞬の差で逆に警察に撃ち殺されてしまいます。
犯人は逮捕される。(でも未成年だからほとんど無罪に等しい)
というハッピーエンドとは程遠い終わり方です。
これが現実だということでしょう。
救い(というのかな)があるとすれば、父親に密告をしてたのは警察内部の人間だっというオチです。
警察としては犯人を生きて捕まえたい。しかし捕まえると未成年だからすぐに放免することになる。
だからその前にお父さん、あいつを殺して下さい。ということですね。
警察の人も少年法という法律を糞食らえと思っている、ということを言いたいのでしょう。
なんとなくクリント・イーストウッドっぽい暗さを感じる小説でした。
現実の世界では、最近我が子や義理の子を殺す事件が多いですね。
そういう事件はたいてい関西のような気がする。
死体を捨てる場所に、奈良がよく選ばれてるし。
現実は小説より暗いかも。